帰ってみれば元の家

 浦島亀太郎は朝起きて、小さい亀に餌を与えてから、会社へ行きました。

 会社の様子は、六〇年前と全く変わりがありません。

 実は、それは昨日と同じです。係長がやって来て、「昨日は、ガタガタ病院の海品先生の診療を受けたのだろうな。一寸、顔色がよくなったようだ。今日は頑張ってくれよ。」と言って、亀太郎の肩を叩いて行ってしまいました。

 亀太郎は、この前営業部長と課長と係長が交渉をしいて一向に進展しない取引を「なんとか進めろ」言われて任されていました。

 亀太郎は、以前名刺をもらった相手の会社の営業課長に電話をしてみました。

 「先日のお話ですが、如何でしょうか。農産物が高騰している時ですからこの前お話しした条件はとても良いと思うのですが、こちらでは、昨日確保した新鮮な商品をしっかり確保していますから、ご契約いただければ、即座に出荷することが出来ます。」と自信満々に言うと、電話の向こうの課長さんは、「すぐ来て下さい。この件を今日契約しないと他に持って行かれるのではないかと思って、昨夜は眠れなかったんだよ。契約書にサインをするから、今日の午後からでも例の倉庫へ搬入してくれないか。多くの店から散々せがまれているんだよ。」というのです。

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