家族の一員

私も犬を飼っていたことがある。
 犬を飼うという言葉は犬に対して失礼かも知れない。言い換えれば、家族の一員として犬と一緒に生活をしていたことがあるという方が適切であろう。
 その犬を、多くの犬に出会うたびに懐かしく思い出す。
 近くを朝、散歩をしているとご主人様を引きずるように歩く多くの犬を見かける。
 ある日、白い柴犬であろうか、姿の良い小型日本犬を連れた、老婦人に出会った。「おはよう御座います」と挨拶すると。老婦人も挨拶を返し、「今日は良いお天気ですね」と言った。
 「なかなか器量の良い犬ですね」と言うと、婦人は嬉しそうに「この子(犬)は私の可愛い子供ですよ。もうすぐ息子が結婚して家を出ますからその後は、この子と二人ですよ」と言って笑っている。
 白い犬は、ご主人様の傍らに、神妙に座っている。
 私は、よその犬には手を出さないことにしている。
 ひとさまの飼い犬には手を出さないことが、私の流儀である。