太郎は無実

 両親は、「明日の朝、スミレの傷跡を確かめてから、正式に被害届を出しますから、その後この怖い犬を処分していただくことになりますよ.」と言って、立ち去りました。

 翌朝、スミレの両親が包帯を取ってみると、一寸したみみず腫れが残っているだけで、かまれた後は何もないのです。両親はスミレに「何で犬にかまれたと言ったの、これでは被害届も何にも出せないじゃあないの」といって叱りつけました。娘の傷口も見ないで早とちりした親の勇み足です。

 翌日、スミレさんは包帯を外し元気に学校へ行って礼子と会いました。「一寸おおきい犬だったので驚いたよ、少し手をひっかかれたのに、礼子さんが大げさに包帯を巻いてくれたから、パパとママが驚いて、あなたの家に怒鳴り込んだのよ。ごめんね。」と言いました。

 警察には何の被害届も出ず、この事件は忘れられてしまいました。太郎は相変わらず庭の隅に寝そべって空を眺めています。