海天宮殿のフグを思い出す

 ふぐ刺しと、ふぐ鍋をみんなが、ガヤガヤ話ながら大喜びで食べている間、亀太郎は憂鬱な気分でした。

 海天宮殿では侍従として、ふぐは毎日掃除や、宮殿管理の仕事に従事していたのです。亀太郎と親しいふぐも多くいたので、そのふぐが捕まえられたのではないかと心配しているのです。

 海帝陛下も、しばしば働き者のふぐたちに声をかけて、「お前達は、猛毒を持っているから、世のために尽くすことが必要なのだ。」と諭されていました。

 海天宮殿にいた頃には、ふぐは愉快な亀太郎の友達で、面白い話をいくつも聞かせてくれました。そのふぐが、刺身になったり、鍋になっていると、亀太郎は悲しくなりました。

 係長は「浦島どうしてふぐを食べないのだ。お前は鍋の中の野菜や豆腐しか食っていないじゃあないか。」と言って「浦島は好きにしろ俺たちはたらふく食おう。」とみんなに言うのです。

 亀太郎は黙っみんなを見ていました。宴会は大変な盛り上がりで、係長も同僚も大喜びで帰っていきました。

 亀太郎も家へ帰ってきました。暗い家の中の水槽で小さい亀が待って居ました。亀太郎は亀に餌を与え、寝てしまいました。

 その世の夢の中で、亀太郎は海天宮殿に残してきた妻子と出会いました。みんなとっても元気そうだったので安心しました。

 夜中に、目覚めると、水槽の亀がいません。何処へ行ったんだろうと捜していると、机の上に、海帝陛下から貰った綺麗な箱があるのです。

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