雉を連れて犬の保護センターへ

 太郎が雉を抱えてセンターへ行くと、職員は変な顔をしました。

 開口一番「ここで野生動物の雉を貰うことは出来ませんよ。」と言って釘を刺されました。

 太郎は言いました。「この雉は、道ばたで怪我をしていたのを私が保護して回復すればまた自然へ帰そうと思っている鳥ですよ。私は、ここに入っている犬たちを一寸みたいと思いまして来たんですよ。」と言うと、係員は納得しましたが、「鳥を連れて入って、犬を興奮させないでくださいね。」言い添えました。

 太郎が犬の檻を見ていると、雉が「そこの檻から五番目の檻へ言ってください。」と言いました。勿論、その言葉は太郎だけしかわからないテレパシーです。その檻の前へ行くと、大きな白い犬が寝そべっていました。「雉が、おい迎えに来たぞ。」と言うと、犬はむっくりと起き上がって、「やあ久しぶり、あれ太郎さんまで一緒とは嬉しいね。」と言って盛んに尾を振りました。

 雉は、太郎に「この犬を連れて帰って下さい。」と言うのです。

 太郎は一寸困って「私のマンションでは犬は飼えないことになっているんだよ。」と言うと、「温和しい奴だから、部屋の隅に隠しておけば問題ないですよ。」と雉は言うのです。

 そこで、係りの人にこの犬を貰っていけますかと聞くと「この用紙に必要事項を書いてください。本来この犬は保護期間が今日までなので、明日は殺処分になる予定だったのですよ。この犬は誰からも相手にされず、長いことここにいたのです。私たちも一匹でも多くの犬が誰かに引き取られることを、望んでいます。」と言って嬉しそうに微笑みました。