猫も仲間に

 保護センターで厄介者だった猿を引き取り手が現れたので、ほっとしたように職員は「良いですが責任は持って下さいよ。市民に迷惑がかからないようにしっかり飼育して下さいよ」と強く念を押してから猿を檻から出しました。

 猿は檻から出されると、犬の背中にヒョイと飛び乗って「さあ早く行きましょう。うかうかしてると別の役人がどんな難癖を付けるか解りませんよ」と言いて太郎を駆り立てました。職員の気が変らないうちに行こうというのでしょう。

 そして、連れだって行こうとすると「僕も連れて行ってくれ」と言う声が聞こえました。声の方を見ると一匹の猫が檻の中から呼んで居るのでした。職員に聞いてみるとこの猫は飼い主が処分して欲しいと行って連れてきたというのです。

 太郎は、これはひどい話だと思いました。雉に聞いてみると「連れて行きましょう」というし、犬も猿も「そうだそうだ」というので、「この猫もお願いしますと言う」と職員は、いぶかしげに「大丈夫ですか、捨てたりしないで下さいよ。そんなことをすると条例違反で罰金を払わなければなりませんよ」と強く念を押しました。

 太郎は、雉を抱えて猫を懐に入れて犬の背中に乗った猿を連れてこっそりマンションに帰ってきました。

 部屋に入るとテーブルを出して、一人と1羽と三匹が小さなテーブルを囲みました。

 太郎は「ここは動物を飼えないところだからこれからはみんな人間としてここにいてくれ、だから1羽とか3匹とか言わないで、私たちは5人家族と言うことにしよう。」と言いました。

 すると誰からともなく、それでは皆にふさわしい名前を付けて欲しいという声が出ました。