太郎の家庭に貴一郎が生まれる

    それから、1年後太郎と三津子の間に男の子が生まれました。お婆さんは喜んで「この子には、貴一郎という名前を付けて下さいね。」と言いました。

 お婆さんは、貴一郎を抱いて大喜びでした。

 段々と貴一郎が大きくなるのを毎日目を細めて眺めながら、笑っていました。

 しかし、嬉しいことの後には悲しいことも起ります。

 太郎夫妻の長男の貴一郎が一才の誕生日を盛大にお祝いした一ヶ月後の朝、お婆さんは冷たくなっていました。それでもお婆さんはニコニコした顔をしていました。

逝くことはこの世の定め

 その後、お爺さんはすっかり力を失ってしまいました。そんなとき、朝早く雉の貴一郎の楠の傍らに眠るように倒れている猫の三四郎が見つかりました。

 それを、朝早く見つけたお爺さんはみんなを起こして貴一郎の木の前に集まりました。  太郎は庭の西の隅に深い穴を掘って三四郎を埋葬し、その上に丁度貴一郎の所に植えた楠と同じくらいの大きさの楠を植えました。勿論、傍らには三四郎記念樹という杭が立てられています。

 お爺さんは、三四郎がいなくなってから毎日ぼんやり空を眺めていましたが秋風の吹くころ静かに亡くなりました。

 太郎の家庭は貴一郎と名付けた男の子が生まれてから、また二人の男の子が生まれたので、大二郎と、三四郎と命名しました。

 年老いた犬の大二郎は次男の大二郎といつも一緒にいます。

 それから数年して、大二郎は庭で眠るように死んでいました。太郎の家族と猿の三津子は庭の南の隅に大二郎を埋めその上に、また楠を植えました。

 それから、一年後、猿の三津子も亡くなりました。最後に死んだ三津子は北の隅に埋められ、その上にもう一本楠が植えられました。

 そんな中で、すくすくと成長している太郎の三人の子供達と一緒に、家の四隅に植えられた四本の楠も大きくなって家を覆い尽くす森のようになりました。