会社へ行ってみると2

  暫くすると、南海産業の社長さんが現れました。係長は拳を握りしめて仕切りをするお相撲さんのように身構えています。

 亀太郎は、社長さんを見て、海帝内閣の平目財務大臣を思い出しました。何となくよく似ているのです。

 平目財務大臣に物を言うときには正面から言っては聞いて貰えません、「左平目に、右カレイ」というように左目に偏っている平目大臣には、右前に座って話すのが良いと言うことを亀太郎はよく知っていました。

 係長が社長の正面に座り亀太郎はその右に座りました。

 係長は、準備してきた膨大な資料を示しながら熱弁を振るいました。

 社長は時々頷きながら、係長の右隣に座っている亀太郎をチラチラ見ていました。その内、係長は言葉を失い黙ってしまいました。  南海産業の社長は「もう少し考えてみるから」と言って、立ち上がりました。係長は「ハイ、宜しくお願いいたします」と言って下を向いています。

 そこで亀太郎は、「社長さん、もう一度このプログラムを見ていただけませんか。」と初めて声を出しました。

 そう言われて立ち上がった社長はもう一度席に着き係長が持って来た膨大な資料を見始めました。

 亀太郎は、「この設備を貴社が設置されますと年間八〇〇〇万円のコストダウンになりますから四年間で設備費用は回収できます。くわえて二酸化炭素も従来の施設の三分の一になりますので、これを他の企業に販売すればこれも大きな隠れた利益になるのではないでしょうか。」

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