会社へ行ってみると3

   社長は、「なかなかいい話だ。前から考えていたんだが、踏ん切りがつかなかった。今の話を聞いてもう一度役員会議で諮ってみよう。君たち少し待って居てくれないか。これから役員会をすることになっているので、そこで諮ってみる。君たちに説明をして貰わなければならない事もあるのですまんが待機していてくれないか。」係長は「一日でも二日でも一年でも此処で待機させていただきます。」と大口を叩きました。

 社長が出て行って1時間ほど経ってから、社長秘書が二人を役員達の会議室へ案内しました。

 一番下座に座った二人を、大勢の偉いさんが一斉に注目しました。

 亀太郎はやはり、係長の右隣に座っています。

 社長が「今回の施設導入は大筋賛成の方向でまとまったが、詳細を役員達に説明して欲しい。」と言いました。兎田係長は、待ってましたとばかり、詳細な説明を始めました。役員達は聞いているのかいないのか、何人かは、頷きながら聞いていましたが、何人かは退屈そうにあくびをしていました。中には居眠りをしている人も居ました。

 係長の説明が終わると、社長はわざわざ亀太郎を指して「浦島君からも多少の補足説明があれば言いなさい。」と言いました。  亀太郎が、若干の補足説明をすると全員目を輝かせて「社長のご判断は偉大です。すぐに着工しましょう。」とあっさり商談は成立しました。

 会社へ帰って営業課長に報告すると、課長は飛び上がって喜び営業部長の所へ報告に行きました。

 翌月も又その翌月も兎田係長と亀太郎のコンビは、これまで難攻不落と言われていた大きなプロジェクトの受注に成功し、営業一課第一班は鼻高々です。

 係長もこの頃はあまり怒鳴らなくなり、席に着いているときは、泰然として余裕綽々の雰囲気で班員を見渡しています。第一班のメンバーも亀太郎に影響されたのかドンドン実績をあげるようになり。第一班は営業一課だけでなく全社の営業の花形となりました。

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