それからの兎と亀

 海帝国への新婚旅行から帰った兎田支店長は、神戸支店の人達と別れ専務として東京へ去りました。

 亀太郎は新任の支店長として張り切って仕事をしています。

 そして、10年が過ぎました。兎田専務の家庭にも、亀太郎の家庭にも子供達が生まれ、夏と正月には海帝国へ家族旅行をするようになりました。

 江ノ島の海から出も神戸からでも行けるのです。亀太郎はヨーロッパを旅行したとき北海の海岸から海帝国へ行き神戸の浜辺へ帰ってきました。

 また10年が過ぎました。老齢になって引退する社長の指名で、一番若い重役の兎田専務が社長になりました。

 兎田社長は早速、亀太郎を専務として本社に引き上げ、二人は海帝国で見聞きしたことを頼りに、海水資源開発の事業を立ち上げました。海底を掘削して荒らすのではなく海水から有効資源を取り出すというプロジェクトです。

 二人は時々海帝国へ助言を求めに行ながら着実に、この事業を充実させ、大きな利潤を上げるプロジェクトへと発展させました。

 今や、日本ほど資源豊富な国はないと言われるほど、日本と世界に貢献する会社となりましたので、社名を変更して「竜宮興産」としました。

 今では、兎田社長が、竜宮城へ行ってきた話をしても「社長のホラ話」と言って笑う人は居ません。みんな真剣に聞いて、自分たちが行けないことを残念に思っています。

 亀太郎が昔拾った亀は随分大きくなって一抱えもあるほどになりまし。庭の池では小さすぎるので亀太郎はこの亀を、大きな河へ放しました。

 亀は時々振り返りながら、気持ちよさそうに下流へ泳いで行きました。

 その亀と亀太郎が、海宮殿で再会するお話はこの次にしましょう。

 浦島亀太郎伝その3(完)

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