ぼろぼろの神戸支社1

  神戸支社に約40人ほどの社員が働いています。4人の班員を叱咤激励しながら実績をあげてきた、兎田係長改め新支店長には、面食らうことがたくさんありました。

 神戸支店の面々は、課長、係長、社員とほとんどが関西人です。それに課長達はみんな兎田所長の先輩達です。係長達が同輩か一寸後輩という人々で、今回の人事を快く思わない人達が大勢います。

 兎田新支店長は、みんなの前で新任の挨拶をするとき、亀太郎を紹介しました「浦島課長は専務の特名により私の補佐として赴任しましたから以後宜しくお願いします。」と付け加えました。

 一人の課長が、「兎田を支店長にしたのもおかしいけど、あんな若造の亀を、事もあろうに伝統ある、神戸営業所の特命課長にするなんて本社の幹部は、アホばかりやな。ウサギとカメで神戸の営業所はめちゃくちゃになるやろなハハハ」と言って失笑しました。

 兎田新支店長が熱く語れば語るほど、みんな白けた顔をしています。赴任してから3ヶ月立ちましたが、新しい発展はありませんでした。みんな新支店長にそっぽを向いているのです。

 ある日、すっかり意気消沈した兎田支店長は亀太郎に「どうすれば良いのかな」と相談しました。

 亀太郎は夜遅く、今すんでいる社宅の近くの、須磨の浜辺に立っていました。

 海帝陛下どうすれば良いんでしょうかと心の中で尋ねると、突然、海面が盛り上がり、白髭の亀が現れました。「亀太郎さん海帝陛下の所へ行きましょうよ。」というのです。

 亀太郎は亀に乗って海帝宮殿へ急行しました。陛下は亀太郎を見て「大分悩んでいるようだな、心配するな、先ず課長から初めて係長と課員一人一人とじっくり話して、彼らが売り込みきれない案件をお前が同行して商談を成立させてやれ。その実績はみんな彼らに与えればいい。お前は此処で全ての栄耀栄華を極めたのだから地上の功労を求める必要はないだろう。いつでも此処へ帰ってくれば、良いのだから。無欲でみんなを助けてやれそうすれば、神戸の支店の業績は飛躍的に上がるだろう。」陛下は長い髭をなぜながらニッコリと笑われました。

 亀太郎は、翌日から、課長一人一人と話合いその後「是非、営業を教えて下さい」と言って課長の営業について行くことにしました。

 行ってみると、出てきた部長は海帝国のウナギ侍従長によく似た感じの人でした。何を話してもつかみ所がありません。そこで亀太郎は、部長さんの目をしっかり見ながら、説明を加えました。部長さんは目をしっかり見詰められると急に真剣になり、話をしっかり聞いて。契約の運びとなりました。次の日は二課の課長さん、その次の日は三課の課長さんと同行しました。

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