警察も手が出せない

  その頃、お爺さんは、警察へ電話をしていました。警察に男たちがやってきて要求したことの一部始終を話すと「お話だけでは何とも出来ませんね。何か証拠の品がないでしょうか、たとえば不正な利息を約束させられた証書など、はっきりした物があれば、対処できるのですがね、コピーでも良いのですが。」と言ってあまり乗り気ではありません。

「それから、鬼島興産の社長鬼島大蔵氏は元ヤクザですが、傷害事件で服役した後、すっかり足を洗って堅実な金融と不動産関係の仕事をしていてとても評判が良いのですよ。おまけに青木一郎衆議院議員も大層気に入って犯罪者から更正して事業を立ち上げ成功している鬼島大蔵氏を後援会の役員に入れているほどです。何か明確な証拠物件がない限り、逮捕状も取れませんし、家宅捜査もできないのが現状です。しかし、五日後に集金にくるころにはそれとなく状況確認に、所員が様子を見に行きますので不当な要求には応じないで下さい。」と言って電話を切りました。

そこへ、三津子がベランダ伝いに入ってきて、「お爺さんお婆さん心配ないですよ。今貴一郎さんと三四郎さんが彼らの行く先をつけてますから、太郎さんが帰ってきたら五人で相談して力になりますよ」と言ってお爺さんとお婆さんを慰めました。

それを聞くと、お爺さんとお婆さんは、ほっとした顔をしました。