イザ出陣

   朝になるとお婆さんに作ってもらった吉備団子を持った、五人は勇んで出かけました。  鬼島興業の前へ来ると五人は近くの公園の木陰に隠れてお婆さんから貰った吉備団子を食べながら様子を見ていました。  そのうち、九人の社員達が三組に分かれて出かけて行きました。  それを、確かめると、猿の三津子と雉の貴一郎それから猫の三四郎は空いている窓からスルリと事務所へ進入して、机の下に隠れました。

 すると、トントンとドアをノックする音がします。銀ネクタイが一人立ち上がってドアを開けると、太郎が一寸間抜けな顔をして名刺を持って立っています。「こちらに田中哲三さんはいらっしゃいませんか。この名刺の住所はここだと思うのですが。」と尋ねると、男は「一寸名刺を見せてごらんよ。何だ、これは上の階じゃあないか。間抜けな顔をしていると思ったら、変な間違いをするものだ。ところであんたは何をしに田中さんを訪ねるんだね。」と聞くと太郎は鞄の中から一枚のチラシを取り出してこの商品を売り込みに来たんです。とっても性能の良い浄水器ですからこちらでもお買い求め頂けませんか。」と言って太郎の会社が扱っている商品の売り込みを始めました。すると奥の方から大きな声がして、「断ってしまえ」と言う怒鳴り声です。  その声を聞くと男は、バタンとドアを閉めました。太郎が男と話している間に隠れていた大二郎はスルリと事務所の中へ入り込み机の下に潜り込みました。