大乱闘

   みんながそろったところで、貴一郎は飛び上がって大きな金庫の上にとまりました。  それを見た三人は驚きました。「こんな所に雉が入ってくるとは今日は良い日だぞ。俺がこいつを撃ち落としてやるから、お前達二人は、ネギや豆腐その他、雉鍋の具材を買ってこい、今日はみんなで鍋を突つこう。」会長がそう言うと、雉が飛び出さないように二人は慎重に窓を閉め切って、「大急ぎで行って来ます。」と言って出て行きました。

 会長は、引き出しから小さな拳銃を取り出し金庫の上にとまっている雉の頭を狙いました。頭だけ吹き飛ばして肉を痛めないようにしようと思ったからです。  射撃にはいささか自信のある会長は、スウーと近づいてきます、貴一郎が飛び上がると一発撃ちました弾は危ないところで貴一郎の羽をかすって弾は壁にめり込みました。会長は慌ててもう一発撃とうとしたとき机の下に隠れていた大二郎が、会長に飛びかかってピストルを持った手を振り回しました。  会長は不意を突かれて空気投げでも懸けられたように宙を舞って床に落ち机の角に頭を打ち付け伸びてしまいました。

 机の下から這い出した三四郎は三津子に金庫の番号を教え、会長のポケットから鍵を取り出すと金庫を開きました。  金庫の中の大金には目もくれず、三津子はそこにあった会長のワニ皮の鞄に借金の証書を詰め込み、ついでに会長が今撃ったばかりの拳銃も詰め込み、鞄を抱えるとドアを開けて四人は外へ出ました。会長はのびたままです。金庫もきちんと閉め、四人が力を合わせて会長をソファーの上に寝かせて、来ましたので事件が起ったようには見えません。

 銀ネクタイの二人が帰ってくれば、会長が眠たくなって寝ているのだろうと思うでしょう。  暫くすると、二人の銀ネクタイが帰ってきました両手に一杯具材を買い込んだ袋を提げて帰ってきました。会長が寝ているので雉を撃ち落として一休みしているのだろうと思いました。   雉を早く料理しておきたいと思って、二人は冷蔵庫の中やあちこちを捜しましたが、雉は何処にもありません。  会長に聞かないといけないと思って恐る恐る声をかけました。